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Welfare Support|言いたい・伝えたい

No. 004

 私は、あの「五体不満足」の著者である乙武洋匡君と、彼がまだ有名になる前に会い、親しく話す機会に恵まれたことがあります。
 その時の印象は、「何と爽やかな奴!」の一言でした。そして話が進むにつれ「もしかすると、これからの日本の障害者の先頭に立つ男かも・・・」と。
 時として出会う人の幸せや人柄を、素直に喜び受け入れることの出来ない、情けない面を持つ私ですが、その時は、何の拘りもなく心の奥底からそう感じました・・・。
 そして最近、福島智さんと出会い(かなり前から、同じ会場で彼を眺めることは幾度となくありましたが)、乙武君と出会った時と全く同じ感動を覚え、神経を失い感じることのない筈の背中を、熱いものが走るのを感じました・・・。
 以来、福島さんのことが知りたくて、彼が書かれたものを探し、片っ端から読ませてもらう内に、彼の考え方や思いにどんどん引き込まれています。
そんな、私が感銘した中の一つをご紹介します。

「酸欠の心に風送ろう」

福島 智            
東京大学助教授(障害児教育学)

 日本の社会には今なお障害者や高齢者にとって様々な「バリア」が存在する。
 エレベーターのない建物は「物理的バリア」であり、利用困難なITは「情報のバリア」を生む。また、障害者との結婚やアパートの入居に反対するのは「心のバリア」の表れだと言えるし、障害を理由に、資格や免許の取得を制限する「欠格条項」などの「法制度のバリア」も深刻だ。
 「心のバリア」とは、まさしく差別意識であり、そして、この差別意識を実体化させるものが「法制度のバリア」だろう。したがって、たとえば「障害者差別禁止法」などの制定を通して「法制度のバリア」の撤廃をめざすことが重要だ。
 しかし、そもそもなぜこうしたバリアが生じるのかを考えると、やはり「心のバリア」の存在に突き当たる。では「心のバリア」はどうすれば除去できるのか。コミュニケーションが鍵を握っているように思う。
 私はコミュニケーションは「心の酸素」だと思う。つまり、コミュニケーションが不足すれば、心は「窒息する」ということだ。
 18歳で視力に続き聴力をも失った私は、他者とのコミュニケーションが断絶される日々を体験する。それは魂の凍るような孤独の日々だった。やがてコミュニケーションを取り戻し、本当につらいのは「見えない、聞こえない」ことではなく、他者との心の交流が消えることだと確信した。
 もちろん、コミュニケーションを持ったからといって、それで「心のバリア」がすぐに取り除かれるわけではない。しかし、多くの差別は対話の不足から生じる。そして、今の社会は、情報の氾濫とは裏腹に、他者とのコミュニケーションに飢えている人が多いように思う。障害者や高齢者と豊かなコミュニケーションを持つことは、「心のバリアフリー」につながるだけでなく、多くの人々が抱えている「酸欠の心」にとって新鮮な風となるだろう。
 自然環境に生態系があるように、人間社会にも、人と人とが織りなす「共生の生態系」が存在するのではないか。もしそうなら、ある属性やハンディを持つものが社会の中で軽視され、無視されれば、この「生態系」にゆがみが生じ、ひいては社会の崩壊につながるだろう。バリアフリーの取り組みとは、社会を崩壊から守り、「共生の生態系」を活性化させることなのだと思う。

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